日本海洋教育学会 設立趣意書

 2021年11月23日

日本海洋教育学会 設立趣意書

  海洋は、生命の源であり、地球環境を維持し、人間社会を支えてきました。この海洋は今、地球温暖化や海洋酸性化、海洋汚染、生息地と生物多様性の喪失によって、劣化しつつあります。一方で、こうした劣化を止め、海洋の健全性を維持することによって、温暖化を緩和し、人間社会を豊かにすることができるとの認識が、国際的に広まってきました。四面を海に囲まれた日本において、海洋の危機の影響を受ける次世代の子供たちにその実態と指針を現時点で分かる範囲で伝え、広く社会全体に生涯教育として伝えることができる人材を育成することが、私たちの責務であり、海洋教育がなすべきことであると考えます。

  海を通じて、人間と自然の関わりを深く理解し、海に触れることで生き抜く力を身につけることができる海洋教育を、広く普及することが求められています。海に親しむことにはじまる海洋教育を通じて、学校教育においてはすべての教科を横断する学習を進め、それら既存の学習をより豊かに深めることができます。また社会教育では、すべての博物館や図書館、公⺠館などの社会教育施設を活用し海洋に関わる人材と、それを支える研究者の育成が必要です。

  こうした点をふまえて、平成19年(2007年)海洋基本法において、「国は、国⺠が海洋についての理解と関心を深めることができるよう、学校教育及び社会教育における海洋に関する教育の推進、(略)等のために必要な措置を講ずるものとする」ことが謳われました。さらに、平成28年(2016年)「海の日」を迎えるに当たっての内閣総理大臣メッセージでは、「海と接し、海を知ってこそ、海を活かす知恵が生まれます。特に若い皆さんに、海に関心を持ち、触れて頂きたいと思います。海洋教育の取組を強化していくため、産学官オールジャパンによる海洋教育推進組織『ニッポン学びの海プラットフォーム』を立ち上げることといたします。このプラットフォームを通じて、2025年までに、全ての市町村で海洋教育が実践されることを目指す」ことが謳われました。

  これまで、海洋教育の普及と実践は、熱心な学校や海洋に関わる多くの大学、学会、社会教育施設、NPO、企業、行政が、取り組んできました。しかしながら、こうした活動の情報交換を行い、互いに評価する場は十分ではありませんでした。海洋に関する最新の知見と、その知見を教育に適用する方法、海洋教育の実践とその学習効果を評価する手法、海洋教育をより普及するための方策、さらには海洋教育が目指すものそのものを、深く広く議論する場として海洋教育学会を設立することが必要です。

  本学会は、教育学と海洋学の研究者、学校・社会教育施設・NPO、企業、行政などの教育現場で海洋教育を実践されている方々が主体となり、海洋立国を目指す国の海洋政策における海洋人材の育成を支えるとともに、国⺠が海洋についての理解と関心をより深めることができるように、海洋教育の内容等を深化することを通して、海洋と人類の共生に貢献することを目指します。

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